《勿忘草》
拝啓 大切な君へ
こんな形で、急にいなくなって、ごめんなさい。
本当は先に言っておこうかと思ってたんだけど、それだったら決心が揺らぐ気がしたんだ。
だから今、行こうと思って。
でも手紙くらいは書いとかないと、心配するかなって思ったから書いてます。
初めて会ったとき、こんなにも綺麗な存在がいるのかってびっくりしました。
話し掛けてみても反応されなかったから、死んでるのかと思った。
でも違くて、お腹すいて動けないだけだったから、俺と同じだと思ったんだ。
なのに、俺を助けてくれた。
俺がお腹いっぱいになるようにって、君の血を全部くれようとした。
その優しさが、嬉しかった。
あのとき出会ってなかったら、俺はきっと後悔していたと思います。
だから、ありがとう。
君はお腹いっぱいになると思いの外元気で、一緒にいて楽しかった。
久しぶりに、こんなに沢山笑った気がする。
君がいてくれて良かったし、君がいないときっと退屈で死にそうだったんだろうなって思います。
本当にありがとう。
だからこそ、今別れないと駄目だなって思った。
一生一緒にはいられないから。
俺にそんな勇気はないから、だから、さよなら。
なんて、本当は俺が逃げただけなんだ。
君がいなくなる、そのいつかが怖くて。
責任なんて取れないから、逃げただけなんだよ。
ごめん、悪いとは思ってる。
友達って言ったのに、ずっと一緒って誓ったのに。
裏切ってごめんなさい、逃げてごめんなさい。
約束破って、ごめんなさい。
こんな酷いことしちゃったから、もう友達じゃないよな、俺たちは。
だから、もう、俺の事なんか忘れて下さい。
最低な奴のことなんか、覚えてなくていいから。
忘れて、これからを生きてくれ。
吸血鬼と人は一緒にいられないんだよ。
ありがとう、大好きだったよ。愛してる。
敬具
「は……はは……馬鹿だよ……なんでっ……! 逃げないで……ッ……最期まで一緒がよかったよ……馬鹿ぁっ……!! わす、れてほしっ……なら……こんな花添えるなよぉっ……!」
追伸 君に似合うと思って、花、好きだったろ。
——勿忘草に、雫が一つ落ちた。
2/3/2024, 9:30:23 AM