雷鳥໒꒱·̩͙. ゚

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―寂しさ―

『…はぁ』
忘れた頃にやってくる、この寂しさ
時々、1人の時間がどうしようもなく、
怖くなるんだよね
寂しいっていうか?
誰かにそばにいて欲しい、
くだらない話でも聞いて欲しい、
そんな気分になる
一人暮らし初めてもう半年だって言うのに
情けないと言われちゃ、
ぐうの音も出ないんだけれど
いつもは、狭苦しくてたまらない部屋は、
改めて見ると、やけに広く感じて
この部屋には誰もいないんだ…って、痛感する
『誰か…そばにいてくれたら…』
そう思わず呟いた時
「ふっふふふ…
ハハ、もう既にここにいるって言うのに」
少し聞き慣れない笑い声と、
涼し気な風鈴のように澄んだ声が聞こえた刹那、
押し入れがスーッと、音もなく開いた
凝視していると、暗闇から現れたのは、
ニヤリという擬音語がピッタリな顔の少女
襖を開け切ると、左手は襖に掛けたまま、
右手を壁について、
押し入れの2段目から
スっと軽やかに飛び降りた
着地の所作は、猫を思わせるように靱やかで、
余裕気な笑みは、貼り付けているのかとでも
思ってしまうほどに、全く揺るがなかった
歳は7つか8つくらいだろうか
白いノースリーブワンピースの肩に、
セミロングより少し長い、
サラサラな黒髪が流れているという、
幽霊か、とツッコミたくなる容姿の彼女は、
表情と同様、堂々たる佇まいだった
彼女の全てから伺える何とも言えない妖艶さに
つい、圧倒されてばかりいたが、
私に押し入れに人を住まわせられるほどの
余裕は無いし、そもそも彼女に見覚えはない
「あら、私に一切の見覚えが無いとでも
言いたげな顔ね?」
見た目にしては生意気すぎる口調と、
大人のような言葉遣い
「本当に覚えていないようね
クックク…まぁいい、教えてあげるわ
…私はね―」

12/20/2022, 11:30:41 AM