風が吹き抜ける。蒼く透明な、一陣の風が。
時刻は午後二時十八分。長かった夏も終わり、季節はもう冬。きっともう少し時間が経てばあっという間に日は暮れてしまうのだろう。そんな午後、堤防の上を、私はふわふわと歩く。
「……何か、極端な気候だよねぇ……」
つい数日前まで気温が二十度を超えていたと思えば、今日からは一桁台まで下がるらしい。多分そう遠くないうちに、雪が降ってもおかしくないぐらいまでは行くんじゃないかな。
「……体調崩れそうだ」
げんなりと呟いて、私は俯く。大きくため息を吐いてから、海の方を見やる。この時期にしては珍しく、穏やかな凪。その向こう、雲の切れ間。一条の日差しが海を照らす。
「天使の梯子かぁ」
呟いた瞬間、強い風が私の髪を乱す。それはまるで、最後の夏の名残のような蒼い風。思わず私は小さな笑みを浮かべる。
「……また来年、だね」
11/20/2025, 7:10:27 AM