(君と出逢ってから、私は・・・)
私の人生の一部に、「君」という存在が組み込まれ ただけ。ただ、それだけのことのはずだった。
ものとか、道端の石ころとか、ただ通りかかっただけの、知らない人とか。ほんのわずかな時間視界に入っただけで、心に残らないような。
そんな存在だったら、どれほど良かったか。
あの日、初めて君と出逢ったあの場所で、私は今も君を探している。もう逢えないとわかっていながら、何度も何度も、この場所を訪れた。
一本の電柱の周りが、沢山の花束と、飲み物の缶と、君のことを知らない、沢山の人の想いで溢れている。それは、日が経つにつれ、だんだんと褪せていったけれど。
私は、遂に何もなくなったその場所に—君の最期の場所に、今日も一輪の花を飾る。
やっぱりここじゃ、君に逢えない。
君のおかげで変わらずにいられた私の命は、君に出逢って変わってしまった私の心によって、殺されるだろう。君と同じ苦しみを味わって。君と同じ痛みを知って。
そしてまた、私は、タイヤの跡が残るアスファルトの道路に飛び出した。
「———危ない…!」
聞こえた声は、あの日の記憶か、それとも…。
そんなことを考える間もなく、私の思考はそこで途絶えた。
目覚めた先が、君と同じ世界であることを願って
5/6/2023, 9:40:13 AM