Ichii

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やわらかな光

ほとんどの窓がシャッターで閉じられているなかで、唯一遮るもののない窓から穏やかな光が差し込んでいる。部屋の中は薄暗く、それだけが光源であったため、布団の上に横たわる私にとってはそれがかの高名な地獄に一筋垂らされた蜘蛛の糸のように思えた。
しかし私は罪人ではなく、怠惰な生者であるため糸に手を伸ばすことなく微睡みに身を移した。目まぐるしい社会生活に揉まれて、体力のない私は休日をこうして部屋の中で萎れた干物のようにぼんやりと午睡を貪ることが、すっかり習慣となっていた。これが学生の時分であれば、買い物だろうが気晴らしの散歩だろうが、何かしらは体を動かしていたであろう。けれども今はそんな気力もなく、ただじっと布団の住民と化している。自堕落であることは自覚している。けれども、気落ちした中では周りの全てが自分を拒んでいるようで、ここから動くことができなかった。
明日からまた多忙な生活が始まる。
私が何もしなくても、少しづつ今日という時間は明日へとにじり寄って行く。窓から刺す光は西日へと変わっていた。

10/17/2023, 3:47:35 AM