お題『距離』
夏季補習は午前中で終わる。教科時間にして3時限程度だ。一人の教師が一つの教室を監視する。
補習の課題は赤点(40点以下)を取った教科よって違う為個別で配られる。余談だが、萌香達がいる空き教室の振り分けは総合計点数で決まれられた順位である。
萌香達がいる補習A組は大神と樺本(かばもと)との会話、それに伴って急遽教師の変更により他の補習組と比べて大幅に時間が削られた。
萌香は代わりの教師より本日分の補習用紙を受け取る。
萌香「多い……これ今日中ですか?」
代わりの教師「そうだ。終わるまで帰れんぞ」
萌香「そう、ですか」
萌香の隣から声が聞こえる。どうやら萌香を呼んでいるらしい。
大神「なぁ、なぁ。子猫ちゃん」
萌香「あ、あたし?」
大神「そうや。自分や、あのさ日本史の教科書持ってへん?」
萌香は驚いて思わず大声を出しかけたが、すぐに自分の口を塞いだ。まさか隣の席に運命の人がいるなんて、思わなかった。あまりにも近い距離だったから気づかなかったのだ。萌香は鞄の中を探してみた。すると日本史の教科書が入っていた。しかし萌香は日本史は赤点を取っていないのだ、どうやら別の教科書と間違えて持って来てしまった。
萌香「はい。どうぞ」
萌香は大神に日本史の教科書を貸した。
大神「ありがとう。助かったわ。子猫ちゃんは俺に教科書かして大丈夫なん?」
萌香「に、日本史は大丈夫。あたし別の教科と間違っって持ってきたみたいだから」
大神「そうなんや。もし課題の中に忘れた教科書あったら言うてな、休み時間に取りに行くから」
萌香「ありがとう。その時はよろしくね」
大神「おぅ。任しとき〜」
萌香は心の中で––––。
『今、運命の人と会話して少しだけ心の距離が近づいた気がする』
と思うのだった。
End
12/2/2024, 8:28:32 AM