kiliu yoa

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貴女は、一向に私を見ない。

 貴女に初めてプロポーズをしたのも、貴女に初めてダンスに誘い、踊ったのも僕だった。貴女と僕は年も近く、国は違ったが家同士の仲も良く、同じくらいの家柄だった。貴女に何度アプローチしても、貴女は目を伏せ微笑み、いつも同じ言葉を紡ぐ。「可愛い人ね。」と、一言だけ。
 
 今では、貴女には婚姻した人が居る。その人のことを…心から愛していることを今まで見たことのない…幸せそうな表情が物語っていた。
 
 貴女と一番仲が良かったのは、私のはずだったのに。愛する人が幸せになることは、嬉しいはずなのに…。

 旦那さんが酷い人なら…、夫婦仲が悪かったら…、家同士の仲が悪かったら……良かったのに。

 考えてしまった…、思ってしまった…、私が貴女を幸せにしたかった。と、

 血の滲み出る努力を重ねたことも、どんなに苦しくても必死に生きた理由も、人生の全てが、貴女のとなりに並ぶだったことに気付いてしまった。

昔から、分かっていたはずなのに……。辛くて…、辛くて…、仕方無かった。

 

7/19/2023, 12:53:59 PM