【花束】
私は花束を貰ったことはない。
思いの丈を込めた花束を私に込めて貰える気配はない。
花は好きでもないが嫌いでもない。
よくよく思い返してみても、花は綺麗だという感想以外大して思い入れはなかった。
つまらない人間である。
こんなやつに花束を渡す人がいないのは当然であろう。
逆に花束を渡したことは何回かある。
どんな花を渡すかではなく、花束を渡すこと自体に意味があるのだ。
花屋の方はどの店に行ってもセンスがよく、ざっくばらんなイメージで素敵な花束を仕上げてくれる。
無から有を作り出す錬金術師のようである。
私の姿もこんな風に素敵に仕上げてくれれば良いのにと思うが、そういえば私は花ではなかった。
私もいつか花束を受け取ってみたい。
いつになるかはわからない。
葬儀には花は付き物である。
そう考えると死んだら大概貰えるのである。
ならばそう焦らなくても良い。いつかは貰えるのである。
誰かのために花束を買うのは良いことだ。
食べるも飲むもできない。
貰って嬉しいが、永くは持たない。
最後には消えてなくなってしまうが、花束に込められた思いは消えてなくなりはしない。
そんな情緒に感動できる人間でありたい。
私は食べ物なんかを貰えたらもっと嬉しいが。
2/9/2024, 2:19:43 PM