とある恋人たちの日常。

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 すっかり肌寒くなった季節。
 この寒暖の差で風邪をひいてしまった、俺が。
 
「ご、ごめんね」
 
 しわがれたすんごい声になった俺の言葉を聞きながら、一緒に住んでいる恋人が首を横に振る。
 そのままテーブルの上に温かい飲みものが置かれた。
 
 この匂いは紅茶かな?
 
 覗いてみると不透明で、ミルクティーにしてくれているようだ。
 俺はティーカップから紅茶をすする。
 
 少し渋みのある紅茶は牛乳でおさえられていて……あと、これは蜂蜜かな。あと舌にピリッとする。
 
 飲み込むと蜂蜜の甘さが広がっていく。
 紅茶は痛みがあった喉を緩やかに通り過ぎて凄く飲みやすい。
 喉が渇いていたから一気に飲み干してしまった。
 
「おいしい!」
「良かったです」
 
 ふわりと微笑んでから、タオル俺の首に巻いてくれる。
 ミルクティーを飲んだ後、内側から温かく感じた。
 
「声がヒドイから温めてくださいね」
 
 そう言いうと、俺の前にあったティーカップに紅茶を作ってくれる。
 降ろした生姜を入れ、最後に牛乳と蜂蜜をたっぷり入れてかき混ぜた。
 
「今度はゆっくり飲んでくださいね」
 
 ことん。
 
 俺を心配した彼女の想いがいっぱい込められたティーカップが置かれた。
 
 
 
おわり
 
 
 
五四四、ティーカップ
 
 
 

11/11/2025, 2:01:24 PM