詠み人知らず

Open App

「この人を理解できるのは私しかいない」

初めて彼女の短編作品を読んだ時、そう思いました。

世界でただ一人

同じ感性を持つ魂の片割れに

やっと出会えた喜びを私は一生忘れないでしょう。

しかし

そんなものは幼稚な勘違いでしかありませんでした。

彼女の煌めく言葉の数々と

繊細で特異な作家性に惹きつけられた人間は

私だけではなかったのです。

私はいつも輪の中には入れてもらえませんでした。

言葉を尽くしたラブレターを贈っても

彼女の関心が私に向くことは

終ぞありませんでした。

届かないどうして…

そうして魂の片割れは

私の胸に嵐を呼んでどこかへ去ってしまいました。

この身体は大事な何かを半分欠いたまま

いつかの手紙の返事をずっと待っています。

報われたくてどうにかなりそう…

この人を理解できるのは私しかいないと

そう思っていたのにどうして…

そこにあった現実は

「私ではない」

ただそれだけだった認めたくない

◼️失恋

6/4/2024, 9:57:36 AM