海月 時

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【ラブ&ピース】
この言葉が嫌いだ。世界はバッドエンドで溢れている。

「いつも何の本を読んでいるの?」
友人が聞いてくる。ここで普通は本の内容を簡易的に話すのだろう。しかし、俺は答えられない。
「適当だよ。でも、ハッピーエンドものが多いかな。」
これは嘘。いつも読んでいる本はバッドエンドもの。しかし、ここで正直に答えたら、後々面倒な事になる。厨二病だとか、陰キャだとか、色々言われる事になる。それだけは避けたい。だから、俺はいつも嘘を付く。

本は好きだ。本には真実も嘘も、正も誤も決められている。現実よりもよっぽど分かりやすい。俺もこんな世界に行きたい、そう思わせてくれる。それに比べて現実はどうだ。叶わない理想を並べるだけ。都合の悪い事には目を向けず、いつだって自分たちが正しいと思い込んでいる。実に狂った世界。しかし、こんな世界に俺は感謝している。本という生きる糧を見つけさせてくれたのだから。

ハッピーエンドよりもバッドエンド。正義よりも悪。何故これほどまでに、惹かれてしまうのだろうか。いつしか俺は、自分もこういう道を歩きたいと思っていた。きっとこの気持ちは、誰にも認められない。しかしそれこそが悪というものだろう。

「死。それこそが、人生のバッドエンドだ。」

俺は自殺をした。しかし、俺が求めていたものではなかった。死ねば、バッドエンドだ。そう思っていたのに、実際にやってみても何も思わない。そうか、分かった。きっと俺はどこかで死を望んでいたのだ。だから、願いが叶って喜びしか感じていないのだ。違う、これではハッピーエンドだ。俺の好きな本は、物語はバッドエンドだ。俺の終わりもバッドエンドで終わりたかった。

6/15/2024, 2:17:16 PM