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 こんな夢を見た。

 不思議なものが見えるようになる夢だった。

 いわゆる幽霊とか、化け物とか、日常生活で目にすることはないであろう代物だ。それらはただそこにいて、特段こちらに何かをしてくることはなかった。視線が合うこともないし、もちろん害をなすこともない。私も「あぁ、いるな」と思うだけだった。

 数日が経った。その日私は外に出かけていた。歩みを進める私の目の端に、一人の少年が映った。なんとなく「自分とは違うものだ」と感じる少年だった。それならばとそのまま足を動かした。

 「見える人でしょう。」

 通り過ぎざま、声をかけられた。思わず足を止めた私に、彼は「見える理由、知りたい?」と問うてきた。なんとなくうなづいてしまった。

 「見える人っていうのはね、人間の死を見たことがある人なんだ。
 「ただ遺体を見たことがある人じゃないよ。消える瞬間を目にして、そこに強い感情を抱いた人が見えるようになるんだ。
 「抱くのはどんな感情でもいい。自覚があってもなくてもいい。
 「とにかく強烈な感情を抱いた人だけ。

 なめらかに説明された。人が死ぬ瞬間か。一度だけ見たことがある。あのとき私は一体どんな感情を抱いたのだろうか。哀しみか、怒りか、驚きか、それとも安心か。分からない。あの瞬間はやけに鮮明に思い出せるのに、そのときの私の感情も、消えた人間が誰なのかも思い出せなかった。

 モヤモヤした。でも不思議とそのモヤモヤはすぐに消え失せた。鮮明な記憶の中であの人が消えた瞬間みたいに、スッと消えた。

 「教えてくれてありがとう。」

 それだけ言って、また私は歩みを進めた。

 そこで目が覚めた。

 不思議な夢だった。



『こんな夢を見た』

1/23/2023, 2:35:27 PM