そこら辺の人🏳️

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 私は先月から「悪魔のお気に入り」になってしまった。

 異形の姿をした悪魔は、多くの人から恐れられている。

 そんな悪魔は私においしい食事を与え、キレイで清潔な衣服を着せ、あたたかなベッドで眠らせてくれる。

 お願いをすれば聞いてくれるし、やりたくないことはやらせないでくれる。

 でも、悪いことをしたら叱ってくれるし、やりたくないことでも必要なことなら諭してくれる。

 そんな生活が続いたある日、1人の男が私の元に訪ねてきた。

「君を悪魔から助けに来た! さあ、ここから逃げよう!」

 私は男をキッと睨む。

「嫌よ! 悪魔以外の奴は私を殴るし、貶すし、食事すら満足に与えてくれなかったんだから!
 私はここで悪魔と暮らすわ!」

 男は悲しそうな顔をした。

「君は悪魔に騙されているんだ! 早く逃げないと食われるぞ!」

 その言葉に私は思わず嗤う。

「その悪魔に生贄として私を寄越したのは、村のみんなよ。むしろ食われるのは本望じゃないの?」

 男は何か言おうとするが、言葉にならなかった。
 その時、男の後ろから悪魔が現れる。
 蒼白になる男を、悪魔は軽く殴って気絶させた。

「外に置いてくる」

 男を連れて悪魔は部屋から出ていく。
 男を置いて戻ってきた悪魔を私は抱きしめた。

「私はずっとここにいるわ。たとえあなたが何者でも」

 ここに来てから、私は他者のあたたかさを知ったのだ。その相手がたまたま異形だっただけ。
 この悪魔なら食べられても構わないと、思っている。
 その日が来ても来なくても、私は一生、悪魔と共に暮らすのだ。
 それが今の私の望みだ。

2/18/2024, 6:26:49 AM