t「時間よ止まれ」
『時間(とき)よ止まれ』
そう私が呟くと周りものが緩やかに止まっていく。全てのものの動きが止まり、その空間を私だけが異物のように動く。
今にもトラックに引かれそうな人を救出する。この救け出した人がどんな人で生きたかったのか死にたかったのか、私には分からない。でも、目の前の救える命は救いたい。
人を動かすのも流石にもうキツイかな…何か方法を考えないと…。
時間を止め続けた代償なのか、私だけは時間が正常に進んでいる。最初は数秒だけの小さな歪みだった。その数秒が積み重なり同い年の子たちより私は明らかに老け始めた。精神は幼いまま見た目だけがいつの間にかもうおばあちゃんになっていた。体が重くて毎日動き出すのも辛い。でも、目の前で誰かが死ぬのが嫌だから、私は見てしまったら今日もきっと時間を止めてしまう。私の命が止まるまで。
2/16/2025, 11:13:29 PM