君に会いたくて
「あたしメリーさん。今ゴミ捨て場にいるの…」
ガチャン
震える手を押さえて電話を切る
メリー…?あの都市伝説の………?
ありえない…だってあれは……
「あたしメリーさん。今駅前にいるの」
嘘じゃない、イタズラじゃない
ダメだ、電話を取っちゃ、
「………っ…!」
「あたしメリーさん。今あなたの家の前にいるの」
なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
電話、切ってるのに…!!
、、本当に駄目、このままじゃ、
「あたしメリーさん。今_____」
私、死________
3年前
あれは中学生になりたてだった頃
気味の悪い人形を見つけた
カビの生えた古汚い西洋人形
お世辞にも可愛いとは言えなかった
ただ、その日は誕生日で気分が良かった
それだけだった
「(目玉……飛び出してる……)」
もちろん人形を綺麗にする方法などはこれっきしも分からないのでスマホで調べて一通り洗ってみた
「おぉ……これはなかなか……」
色白い肌にぷっくりとした唇
金色の髪に少しカールのかかった髪
まさに西洋の少女を象徴したような見た目の可愛らしい女の子
見た目がよくなったからか人形を見る度に心が綺麗になるような気がした
人形相手に相談したこともあったけれど
今思い出しても少し…いや結構恥ずかしい
勉強に力が入らなくて部屋を掃除をしているとふと人形に視線が入った
要らないな、と思ったけど口には出さなかった
…人形相手でも失礼な気がしたから
私は“その子”を遠ざけようとした
もちろんその時は「メリーさん」を意識しての行動ではなかったし
どうせ誰かに上げたりするだろうと思っていたから名前は付けなかった
…あの頃は受験勉強て忙しくてギスギスしていたから仕方ないとも思うけれど
どうしてもこの部屋にあるのを見ると邪魔に思えてくるのだ
それから数年経って、私も高校生になった
メリーさんの存在を知ったのは高校生になってからだった
バイトをして1人になる時間が増えたのでネットに触れる機会が多くなったからだ
すると自然に友達ができて
よく部屋に招き込んで一緒に遊んでいた
「ねぇ、この人形なにー?」
「え?あぁ…これね__」
「なんかちょっとキモくね?」
「えぇ?そう…?不気味ちゃあ不気味だけど」
「そう、だね……」
友達から嫌われたくなくて同意した
それが私の命を変える運命の出来事だったのかもしれない
私は捨てなかった
でも
あの時、メリーさんは
“捨てられた”と同じ心境だったんだ
「いやっっっ!!!!こないで!!!!」
死にたくない……
ただその一心で周囲にある物をひたすらに投げた
あの子に当たっているのかも分からない
幽霊のような存在だからこの世にある物体は当たらないのかも
でも「“生きたい”」という気持ちだけが私を突き動かしていた
メリーさんが着実に、どんどんと私に近づいてくる
周りの目なんて気にせずに顔をぐしゃぐしゃにして、袖で拭いても拭いても溢れ出す涙を拭う
「……っは、ぁ………あっあっ………ううっ……うっ…ぁうぅ……」
うまく呼吸ができない
どうやら人間は本当に追い詰められた時には何もできなくなるらしい
堪えていた 涙が溢れて、情けないと思う
せめて____せめて苦しくないよう
ぐっと目を閉じた
「……………?」
目を開けると
まさに西洋の少女を象徴したような見た目の可愛らしい女の子が私の視界に入った
「綺麗にしてくれて
可愛いって言ってくれて
いっぱいお話ししてくれて」
「ありがとう」
「…待って、」
気づいたらメリーさんはいなくて
横には白い百合の花が置かれていた
1/19/2024, 11:57:24 AM