「こんな世界、大っ嫌いだ。」
そう強く思った。でも、どうしてこの世界はーー。
「死にたいな。」
人間は嫌いだ。矛盾ばかり口にする。自分より優秀な誰かを恨み、自分より劣等な誰かを嘲笑う。過去から何も学ばない。醜く哀しく愚かな生き物。
「…眩しいな。」
太陽は嫌いだ。自分が正しいとでも言うように、誰彼も光らせる。太陽があるから、影が生まれる。朝が始まる。自分勝手なお星様。
「…空気が重いな。」
空気は嫌いだ。肺に沈み、呼吸が止まりそうになる。息を止めても、すぐには死ねない。どうしても空気を求めてしまう。残酷な生命源。
全部嫌いだ。俺も、俺を取り巻くものも。全部全部、壊して、燃やして、存在を否定してしまいたい。でも、一番嫌いなのは、こんなものを創ったこの世界だ。
俺は今、ある建物の屋上に居る。理由は一つ。こんな世界とおさらばする為だ。でも、きっと俺は死ぬ事は出来ない。馬鹿でも分かる、自分の臆病さに嫌気が指す。何度目だろうか。この場所に立つのも、この場所で涙を流すのも。死にたいと叫びながらも、死ぬ事から逃げている俺は、生きた人間なんだと実感する。人間も太陽も空気も嫌いなのに、人間として太陽の下で呼吸をしながら待つ俺は、何て惨めなんだろう。あぁ、本当に嫌いだ。
「こんな世界、大っ嫌いだ。」
どうしてこの世界は、こんなにも美しいのだろうか。こんなにも手放したくないのだろうか。死にたいと思わせるく程に憎いのに、生きたいと思わせるほどに美しい。あぁ、どうしてこの世界は、こんなにも残酷なのだろうか。
6/9/2025, 2:40:37 PM