そこは薄暗い地下室だった
細い灯りを元に、ぼろっちい服を着た男が、あぐらをかいて下を向いていた。
男は、片手でドライバーを持ちながら、もう片方の手で丸い時計を手にしている。
カチャカチャと音を立て、ドライバーの種類を変えながら、時計の基盤をいじり続けている。
はー、とため息をつき、それを続けること数十分。
「はー!おわったぁ…!」
満面の笑みを浮かべ、鼻をいじる。
「俺でも直せちまうんだな。にしてもこれ、本当に"時を巻き戻せる"時計なのか?」
自分が直した時計を、まじまじと見つめ
「まぁいいか!何もなかったら、それはそれで」
と、自分の中で答えを出し、立ち上がる。
時計の針を直接触り、逆回りに無理矢理にと動かす。
もういいだろう、とツッコミを入れる辺りでその指は止まり、手を離す。
すると、針は勢いよく時計回りに動き出し、プシューと音を鳴らし始めた。
「うぉ!きたか、きたか!?」
男は時計に顔を近づける。針がぶつかりそうなぐらいに
しかし、その顔は途端に落ちた。
ごとりと、生首だけが、床に血をぶちまけながら。
数秒遅れて、身体もぐしゃりと床に倒れた。
首から、血のみずたまりが形成された。
男の首を千切った何かは、獣のような唸り声をあげる。
四足の獣は、その死体を容易く完食し、次に床に落ちた時計に食らいつく。
ライオンが骨付きの肉を食べるかのように、音を立てながら、それは数秒で体内に吸収された。
獣は、使命を果たしたのか、いつのまにか部屋に生まれた、穴に入り、姿を消す。
部屋に残ったのは、薄暗いランプと、床に残った血溜まりだけだった。
お題『時計の針』
2/6/2026, 11:14:07 AM