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『ティーカップ』


温かなミルクティーの香りが鼻をくすぐり、小さな部屋に午後の温かな光が差し込んだ。

ティーカップの縁は少しだけ欠けていた。

湯気の向こうは誰かの笑い声で揺れており、彼女の目はいつも下を向いていた。

私はいつも泣きそうな顔をしている彼女にとって少しでも安らかな時間を与えたい。
そして、私がどれだけ色を失ってもそばにいてくれる彼女には恩返しをしたい。

私は、彼女の思い出だけは零さないようにそっと蓋をした。

11/11/2025, 3:16:52 PM