緋鳥

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 今日の気温は本日も今年最高気温を更新していた。

 夏真っ盛り。熱中症警戒アラートは全国で鳴り響き、外を出るのも命懸けになったのも当たり前になってきた。人々が自然と涼しさを求めて様々な商業施設や公共施設を利用し始めている。
 今の私もフードコートの1席をアイスコーヒー1杯で2時間程粘っている。天気アプリが示す現在の気温は38度。ちょっと人間には危険な気がする。今、遠くで救急車のサイレンの音が聞こえた。やはり危険だと、もう氷も溶け切っているアイスコーヒーを誤魔化すように飲んだ。
 お昼を過ぎて暑さも最高潮なフードコートはかなり賑わっている。家族連れや学生の姿も見える。もちろん、私のように占領している人も見られる。お互いに気にしてはダメだがそろそろ移動したほうがいいかと良心が痛み出す。

 家の立地とバグのような電気代の高騰と少ない給料のせいで私はよくこのフードコートを利用している。無料Wi-Fiと充電スポットと居座る根性さえあれば今の人間は無限に時間潰しができるのだ。ここのおかげで、私はまだ今年は熱中症になっていない。
 クーラーを効かせ、私達を守っているこの商業施設はまるで鳥籠のように私達を閉じ込める。自主的に逃げないようにし、ご飯も与えてくれ、水分も与えてくれる。
 だが私達には帰る家がある。もう少し夕方になり、気温が下がってくれたら家に帰るのだ。

 早く安心して家でゆっくりしたいが、人類が温めた地球はそうしてくれない。 

 ぶぶ、とスマホの通知が震える。天気アプリが数分後にゲリラ豪雨の確率があると伝えていた。ガラス窓の向こうを見ると、奥から黒い雲が動いていくのが見えた。気象知識の無い私でもこれは強い雨が降るのが分かった。

 まだ鳥籠から出られそうにない。私は観念し、2杯目のアイスコーヒーを注文するために席を立った。

7/26/2024, 4:28:36 AM