シロツメ ナナシ

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『静寂の中心で』


雨上がり、
真夜中の散歩道

虫の声さえしない夜

雨の匂いが残る中、
私は1人散歩に出た


私の心は表面張力

コップの水が今にも溢れそう


―――――――――ならまだいい


………………零れない―――


表面の水は、そのまま膨らむ
まるでシャボン玉のように
たまに「間違ってこぼれる」が
「それが間違いなんだ」と直ぐに戻ろうとする

……私にも分からない
私にはこのシャボン玉のような水が
「流すべき涙」だと分かってるのに…
上手く……泣けない…

…?シャボン水の中心に
なにかがあるような……?
この際触れてみようとするけれど
私が手を伸ばすと
コップの中に無理やり引っ込む
……あれだけの量を一体どこに

私が少し離れると、
また出てきてシャボン水に
どこぞの臆病系モンスターみたいだけど…
今はちっとも笑えない


……今だけはそれでもいい
私はここを離れないと決めた
この水が割れた時、
シャボン水の中心にあるものが
きっと私にとっての応えのひとつ


―――自分との内省を胸に秘め
湿った夜道の帰路に着く―――


〜シロツメ ナナシ〜

10/8/2025, 1:15:12 AM