彼女はいつも、俺によそよそしい。
葉瀬(ようせ)は前からの友達だから仲が良いのは知ってる。玲人(れいと)は人柄も良くて、雰囲気も柔らかいから近寄りやすい。
じゃあ俺は?
確かに髪は染めてるし、背は高い自信あるし、どっちかと言えばガサツで、そして感情の凹凸が激しい。
そのせいか彼女は最初、俺を警戒した。
わかってる、第一印象は葉瀬に比べてあんまり良くなさそうだったし。
でも知り合ったからには仲良くなりたいと思うのが俺だから。
彼女の趣味は読書。ゲーム好きの俺とは正反対だ。ちなみに俺は本を読むのが好きじゃない。
でも少しだけ読んでみることにした。
選んだ本が悪かったのか、十数ページで俺の頭はショートした。
今度は彼女が好きだと言ってた人の本を読んでみる。今回はミステリーだったからかスイスイ読めた。でも面白かったけど、感想を聞かれてもどう答えればいいのか分からなかった。
今度はオススメされた本を読んでみる。彼女は軽く要点をまとめてくれて、俺はそこに注意して読んだからか、なんか読めた。まだ感想は難しいけど、いつかは言えるように。
なんでそこまでするのか、って?
前に小説を読んだ事を話したら、驚いてから嬉しそうにしてたから。
その顔が、なんとなく優しい気持ちにさせてくれるから。
彼女の事をもっと知りたいし、俺の事を知ってほしいから。
だから好きじゃなかった本を読み始めた。
なのに。
「なんで他の人に向いちゃったんだよっ...」
俺はベッドでうつ伏せになる。枕が涙で濡れちゃうけど、気に出来ない。
ベッドの隣の棚には、ゲーム機と真新しい本や読み倒された本などが数十冊並べて置いてあった。
お題 「好きじゃないのに」
出演 拓也 秋 葉瀬 玲人
3/25/2024, 5:27:47 PM