「卒業、おめでとうございます」
先輩は、両手に抱えきれない程の花束を受け取り、満面の笑みを浮かべている。友人と後輩に周りを囲まれて、凄く幸せそうに見える。僕といた時には見せてくれなかった顔で。
高嶺の花なのは自覚してた。だけどどうしても……もしかしたらって……そう思ったのが不幸の始まりだった。僕は失敗した。自己満足を満たすために彼女を巻き込んでしまった。最後に謝りたかったけど、今になって勇気が萎んでいく。
彼女がふとこっちを見た。僕は咄嗟に目を逸らし、柱に隠れる。花束を持つ手に力がこもる。白い花はとっくに萎れ、重力に従って地面に向いている。
「ちょっと待ってて」
人混みの中から声が聞こえた。こっちに来る。それを察し、僕はまた逃げた。
「さよならは言わないで」
12/3/2022, 11:06:38 PM