谷折ジュゴン

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創作 「失われた時間」

たとえ駄文だろうが書くことが大事だと知ったのはつい最近の出来事である。俺は何の前触れも無く作文スランプに陥り、一文字も書けない日が続いた。

書かねば、書かねばと思うほど書くものを目の前にした時に手が止まる。だけど、書きたい衝動はある。謎の焦りと義務感だけが募り、何も書けないまま時が失われて行く。

ふと、 原稿用紙に張られたふせん紙が目に止まった。彼女からの添削メモである。読みやすい形の字を見つめていると、ある時彼女が言ったことを思い出した。

「書きたいのに書けないなら、意味を全く考えずに思いついた単語を紙に書き出すと良いよ。で、疲れたらしっかり休む、焦りは禁物だからね」

その言葉を思い出してから早速、手近にあったノートに思いつく単語を書き出した。あれから数日が経ち、下手ではあるが纏まった量の文章が書けるようになってきた。

書くことが失われた時間を通して俺は、言葉を綴る喜びを少しずつ取り戻すのだった。
(終)

5/13/2024, 3:17:23 PM