ルールその1、鬼を決めます。
「って、なかなか残酷じゃない?」
息を切らしながら、副担任が笑った。
うちのクラスに来て数日だというのに、教師を巻き込んで鬼ごっこが開催される点にはツッコむのを諦めているあたり、馴染むのが早いと苦笑する。そして、先程の副担任の問いかけに数秒頭を使った。
「確かに。仲間はずれを決めるわけですからね」
「そう。お前は人外だって遊ぶ時に言われるの、普通に考えたら怖いよね」
「ええ……それに、昔の人はなんで鬼ごっこって名前にしたんでしょうね」
「というと?」
肩で息を始めた僕に、副担任の視線が降り注ぐ。
建物の陰に隠れた僕らは、息を整えて会話を続けた。
「だって、ごっこって真似みたいな意味だから、鬼の真似ってことですよね。わざわざ仲間はずれを決めたのに、どうして遊びの名前はその異形の名前にしたんでしょう?」
「なるほど、興味深い視点だね。鬼が交代するのも不思議だし……何かしら理由はあるんだろうけど」
「じゃあ、生きて戻れたら調べますか」
「そうだね」
唸り声が頭上から聞こえ、僕らは二手に別れた。
鬼ごっこ。うちのクラスにおける鬼ごっこは、一般的に流通しているそれとは少し違う。鬼となってしまった生徒の、鬼の衝動を抑えるための遊び。追いつかれたら終わりの、命懸けの遊び。
「死なないように頑張ろ」
副担任が別れ際にサムズアップしたので、僕もサムズアップを返して走った。
4/24/2024, 3:47:46 PM