【ブランコ】
ブランコとの思い出は幼少の頃ばかりだ。
私にとってブランコは公園のヒーローであった。
前後に動くだけの構造だが、不思議なことにブランコのファンは全国にいる。
かくいう私もファンのひとりだ。
私の実家の隣には少し大きい神社がある。
公民館のような母屋と相撲がとれる土俵があり、周りを取り囲むように木々がそびえたつ。
遊具はほぼないのだが、なぜかブランコだけがひっそりと存在している。
神社にブランコなどあるのだろうか?
私は今までに見たことがない。
佇まいはひっそりとしているがそこは公園のヒーロー。存在感はピカイチである。
大概ブランコは横に2つ並んでいるが、ここはなんと3つである。3つ。
奇数人で遊ぶことを念頭に置いたブランコとはなんとも珍しい。
だが神社という場所柄、昼間でもなかなか暗くひとりでは恐ろしい。
いつだったかひとりでブランコに乗っていると、隣のブランコが風もないのに揺れだした。
「一緒に遊びたいの?」などと話していた気もするが、私と遊ぶとはよっぽど暇な神様であろう。
何百年もこの神社を守っている神様は、どれだけの子どもと一緒に遊んでいたのだろう。
ブランコが3つあるのは私と友だち、神様があとひとつに一緒に乗るためなのかもしれない。
夕食の際こんな話を家族にしていた。
当時中学生の姉は、
「偶然揺れたんだよ、神様なんていないよ。」
などと現実的な話をしていた。
姉が無宗教者だったのである。
私は中学生は大人なんだなぁと思った。
と同時に、じゃあなぜ姉は毎年初詣に行っているのだろうとも思った。
中学生は複雑であるのだなぁとも思った。
2/1/2024, 12:29:01 PM