極短SF! お題一つにつき2個!

Open App

海の底の完全な無音の征服の中で、たった一つ、微弱なミサイル発射口の開閉音が届いた。海中1000mをを進水する
巨大な暗黒のミサイルの横を、深海ザメが通り過ぎた。ミサイルは容赦なく海中を突き進んでいく。
深海ザメは慣れないミサイルの振動にしばし硬直したが、向こうから微かな生物的振動を探知したので、静かにそっちへ向かっていった。
数分後深海ザメはフクロウナギを捕まえた。
栄養と光の乏しい深海では、明日生きれるかがこの一食にかかっている。次いつ食べれるかなど分からないから、一度の狩りに命がかかっている。
ひとまず明日まで延命できた。深海ザメはもう何万年も、こうやって命を繋いできた。明日、また明日この繰り返しだ。深海ザメの霞んだ白い目にはそんな未来がぼんやり写っているのだろうか。
または、感覚を研ぎ澄ました彼には実際に近々訪れてしまう終焉が知覚されているのか。先程の深海の人工音は終焉の産声であったということだ。

____

海の底を研究するため、中年海洋学者は深海魚に転生することにした。
そこでまとめた研究結果を持って、彼は浅海へ上っていき、漁船の網にかかった。
打ち上げられた彼は「オジサン」なんていわれて囃し立てられた。
実際、前世の彼に似て作られていた。これは彼なりのジョークだ。業界人たちは魚に転生してやる!などと気をおかしくして自殺したあの奇人が本当に転生したんじゃないかといって笑い話にした。
その顔があんまり中年のおじさんっぽかったので写真を取られた。図鑑とかでよく見るあの写真は彼だったのだ。
あの写真は物知りな小学生から、幅広く知られているが
あの3秒後に人語で深海に関する未知の研究を語り出したことを知っているのは世界でもひと握りの要人だけだ。
初め偶然と処理されていたその奇怪な鳴き声、の内容が、実際に証明されてから彼らは目の色を変えた。

1/20/2024, 2:05:29 PM