たくちー

Open App

 君と紡ぐ物語は、まるで"小説の書き方"を見ながら書いたような、異世界転生くらい食傷気味な物語。

本棚に並ぶのは小説家の書く小説のような本ばかり。
中身は違うけど骨子は一緒。物語は平和を求めない。何事もなく幸せな人生を送りました、なんて登場人物はモブ以下だ。
それなのにこの世界は、運の良さを努力と勘違いして訊ねる。
「今まで何してきたの?」

数年単位で何も出来ないような病気や怪我、精神的な病を"運よく避けれる環境にいた"ことに無自覚な発言。ガチャガチャでハズレを引かなかっただけ。

社内のフィギュアケースにはドッペルゲンガーみたいに同一人物がズラリと並んでいて、"貴方じゃなくても代わりはいくらでもいる"と、動かない瞳が一斉に呟く。

テレビや映画ではドラマチックな人物を称賛するくせに、その過程にあるかもしれない人はチェスの駒みたいに盤上から落とす。

物語は紡げる距離まで寄り添わなければ成立しない。



題『君と紡ぐ物語』

11/30/2025, 7:34:41 PM