「に…げて…」
俺が辿り着いた時、彼女はその化け物に取り込まれそうになっていた。
万が一、切り離せたとしても、周りに広がる赤の多さを見る限り、助からない。
こんな時なのに、そんな冷静な判断ができるのは幸か不幸か。
どうしたら、どうしたらいい。
彼女を失いたくない。俺の唯一。
彼女がいない世界なんて何の価値もない。
「…そうか、」
それなら俺が消えればいい。
壮絶な人生を歩んできた彼女には、幸せを知ってもらいたい。
もちろんそれだけ、なんて聖人のようなことを言う気はない。
なによりも、俺が彼女を一番に想うように、彼女にも俺を一番に思ってほしいのだ。
だから、俺の命を使って、彼女をこの世界に留める。
彼女のためにこの命を使えば、きっと彼女は俺を一生忘れられない。
世界に一人だけの、世界に一つだけの存在になれるだろう?
だから俺は何の躊躇いもなく、彼女を呪った。
【世界に一つだけ】
9/10/2024, 9:07:15 AM