生憎の渋滞。迎えの車はしばらく来ないらしい。
6人で待ちぼうけ、というやつだ。
廃線したバス停、屋根などはないさびれた長ベンチに、肩を揃えて座っていた。
西からの日差しは雲に覆われているものの、ジメッとした暑さが、どこからか聞こえるセミの鳴き声で増幅する。
「あー…あっつ」
「あついねえ」
「暑いですね!」
「暇」
「ひまだねえ」
「暇ですね!」
「所持品は全て置いていくのが条件の任務だったからね。暇潰しできるものが何もないよ」
「私は煙草は持ってる」
「なんで持ってんだよ」
「いる?」
「いらねぇ…おい誰かなんかしろよ」
「悟は相変わらずの無茶振りだな。しりとりでもする?」
「あー…リンゴ」
「ゴリラ」
「硝子なんでこっち見ていうの?ラジオ」
「えっ先着順なのぉ?じゃあ、おにぎり」
「おにぎり食べたくなってきたよ!陸上!」
「…」
「…」
「……おい、お前の番。おもしろいこと言えよ」
「ハァ……うどん」
「しりとり終わらせんな!」
「七海が真顔でうどんって言うとおもしろいからいいんじゃない?…うどん…っ」
「なんでちょっとツボってんだよ」
「七海、そこは好物のパンで終わらせる方が良かったんじゃないか?」
「なんでですか嫌ですよ」
「えーそうかな…あ」
「どうしたの?灰原」
「ほら!あれ、電線に何匹も並んでる鳥ってくーくんと同じ名前の鳥だよね!」
「あーほんとだぁかわいいねえ」
「かわいいかぁ?あんな詰め寄って並んでるの見ると暑苦しいだろ」
「なかよしって感じでいいじゃぁん!」
「ねぐらへ安全に帰るため、あぁやって集まる習性があるらしいから、言いようによっては仲良しなのかもしれないね」
「さすが夏油さん!物知りですね」
「私もそろそろ帰りたいんだけど」
「さすがにそろそろですかね」
「あっ、飛んでっちゃった」
徐々に橙色に近付く太陽。虫の鳴き声も変わっていく。
彼らの後ろ姿もまた、電線に仲睦まじく並ぶ鳥のように見えていることには、まだ誰も気付かない。
【鳥のように】
8/21/2024, 12:33:34 PM