Machi

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「私の理想のあなたしか、私は愛せない」
僕は心臓が早鐘を打つ中、その言葉を聞いた。
一世一代の告白。何年もの片思いを経て、やっと伝えた言葉。
君は目を伏せがちに、これで見捨ててくれるというような瞳をする。
上がりきった体温を感じながら、口を開いた。
「君の理想になってみせる」
僕が何年君を好きでいたと思っているんだ。
君の理想が高いのも、高いからこそ、大切な人が離れていってしまったことも知ってる。
だから僕は、君の為ならどんな人間にでもなれる。
君はパッと顔を上げ、呆けて僕の顔を見る。
「僕は、君が好きだ。理想の高い君が、好きだ。」
僕は言ってから、気付いた。
《理想の高い君》…これもきっと僕の、《理想のあなた》だ。
僕たちは案外、似た者同士なのかもしれない。
「………」
君は長い長い沈黙の末、口を開いた。

5/20/2024, 10:51:04 AM