『ジャングルジム』
幼い頃、彼は公園のジャングルジムのてっぺんが好きでよく登っていた。するすると軽やかに登っていき、細い鉄の棒にしばらく腰掛けて遠くを見るのだ。
対して僕は臆病で、てっぺんまではいつも行けなかった。だけど彼の近くにいたくて、真ん中あたりまで登ってしっかりと柱を握りながら、平気なふりで希望に満ちた夢の話を聞いていた。
本当は、勇気がほしかった。
同じ景色が見たかったんだ。
「一緒にてっぺん取ろう。お前とならできる気がするんだ」
大人になった彼は相変わらず眩しかった。
差し伸べられた手を見つめて僕は目を細めた。
「僕もそう思う」
握った手のひらは熱くって、鉄の匂いがよみがえるようだった。
9/23/2024, 10:16:29 AM