南葉ろく

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 喜ぶ声。怒る声。哀しむ声。楽しそうに笑う声。
 君の声が、頭の中にこびりついて消えない。人は最初に声から忘れてゆくというけれど。今でも、こんなに。こんなにも鮮明に思い出せるのだから。忘れさせてはくれないのだから。
 きっと君という存在は永遠に僕の中に在るのだろう。
 本当は知っている。君はもういない。僕の前に姿を現しはしないのに、声は今でも鮮やかなままで。実は傍にいるのかもだなんて、虚しい想いが僕の全身を震わすのだ。
 いっそのこと、耳を切り落としてしまえたら。
 莫迦なことを考えてみる。

 無意味な思考だ。分かっている。たとえ聴力を失ったって。
 この声だけは、忘れない。
 今日も、君の声が聞こえる。



テーマ「声が聞こえる」

9/22/2024, 9:23:55 PM