初唯

Open App

※この話に出てくる人物の名前は主が想像の元付けました。
フィクションです。


『なかないよ』


大丈夫、僕は強いから!
僕はお兄ちゃんなんだよ!



ぼくは「いさわ しょう太」!小学2年生!
今ね?ママのおなかの中には赤ちゃんがいるんだって!
だからね!もうすぐぼくは"お兄ちゃん"になるんだ!

[翔太。こっちにおいで。]
あ、ママがよんでる!

「うん!」
[翔太、ママはもうすぐ赤ちゃんをお迎えに行くの。
だからね、パパと2人でお留守番しててほしいんだ。]

…ママと会えないってこと?そんなのやだよ!
「いや!ママといっしょがいい!」

[…翔太はもう"お兄ちゃん"なんだから、我慢出来るよね?]
お兄ちゃん…そうだぼくはお兄ちゃんになるんだ!

「、できるよ!ぼくもうお兄ちゃんになるんだもん!」
[偉いね!翔太。大好きだよ!]
「ぼくもママのことだーいすき!!!!」
ぎゅー!ぼくはママのことだーいすきなんだ!

〔……パパはぁ…?翔太ぁ…パパも〜!〕
[ふふっ、パパのこともだーいすきだよ!]

この日はかぞく3人でぎゅーをしました。
そのあとママをびょういんにおくりました。
またぼくはなきそうになったけど、
お兄ちゃんになるからがまんしてなきませんでした!
はやく赤ちゃんがくるといいな〜


それからしばらくして赤ちゃんがお家にやってきた。
ぼくにはいもうとができたらしい。
お家にやってきた"いもうと"はとても小さくて
すこし力を入れたらこわれてしまいそうだった。

お家に"いもうと"がきてすぐ、とおくにいるおじいちゃんと
おばあちゃんがきた。「あそぼ」っていったけれど、
おじいちゃんとおばあちゃんは"いもうと"を見てて
あそんではくれなかった。


"いもうと"に名前はまだないらしい。
これからつけるんだって。ぼくもてつだおうとおもって
クレヨンをもっていったけど[向こうで遊んでてね]って
ぼくはおてつだいできなかった。

ママとパパは"いもうと"の名前をずぅっと考えていて
あれだこれだとなやんでいた。
1人であそぶのはたいくつで何度も「遊ぼ」と言ったけれど
[向こうで遊んでてね]〔パパとママは大事な事してるから〕
ってパパもママも遊んではくれなかった。

おくで"いもうと"が泣いていた。
ぼくはお兄ちゃんだからね。なぐさめてあげないと。

[何してるの!]
きゅうに大きい声がきこえた。ぼくはびっくりして
声のする方を見た。ママだった。
「あのね、"いもうと"がないて、っ」

ただぼくは、いもうとをあやそうとしただけなのに…
[なんで泣かせてるの!あぁ〜もう!ごめんね《春葵》]
「はる…な?」
[……この子の名前は今日から"春葵"よ。ねぇ〜"春葵"〜。]

"春葵"が来てからぼくのパパとママはおかしくなった。

あそんでくれなくなったし、お話もしてくれなくなった。
"春葵"ばかり構うようになった。
ぼくはだんだん"春葵"がきらいになった。この異物が。
それでも僕は我慢して、自分なりに可愛がっていた。

が、ある日の事だった。ぼくの絵がやぶかれていた。
一瞬の事だった。小学校から帰ってきて手を洗い、戻ったら
ぼくがかいた絵がビリビリだったのだ。
「ぼくの…絵…」

せっかく家族みんなの絵をかいたのに…
何かぼくの中で糸がきれた。
ぼくは"春葵"にどなった。

「何してんだよ!!なんでやぶったんだよ!!!!」
"春葵"が泣いて、すぐにママが来た。
[何してるの!]
「ママ!"春葵"が…」
[翔太!!!!]
…え?ぼく?

「ちがうよ、ママ、"春葵"が…」
[言い訳しない!"春葵"はまだ赤ちゃんなのよ!?
翔太はもうお兄ちゃんでしょ!"春葵"を泣かせないで!!]

〔ただいまー〕
ちょうどパパが帰ってきた。
[パパ!翔太が…]

そこからはずうっと怒られてた。パパにも、ママにも、
「…ッ、パパもママも嫌いだ!大嫌い!!」
自然と口から出た言葉であり、本心だった。

[なんて事言うの!]
〔親に向かってなんだその言い方は!〕
「だって、パパだってママだって"春葵"が来てから"春葵"の事ばっかり!ぼくの事なんてきにしてくれないし!
全然遊んでくれななくなった!皆して"春葵"春葵"って…
こんな事なら……"春葵"なんて、要らなっ、!パンッッ!」

その日、初めて僕は親に叩かれた。
もう何も聞こえなかった。視覚から得られる情報は、
ただただ、何かを言っている父と泣き崩れる母だけだった。
段々と視界が滲んでいく、もう、何も分からないや、


その後僕は、外に出された。
その日は夜はまだ肌寒い春の日だった。


その日から僕は"いいお兄ちゃん"を演じた。
春葵に何を壊されようと、何を奪われようと。
ずっと笑顔で。全てを許して。

この"人達"はどんな理不尽があっても春葵を優先し、
甘やかすんだ。春葵しか眼中に無いらしい。

僕はお兄ちゃんだから、ね。
僕、ちゃんとがまん、できるよ。
ぼく…ぼくは…

3/17/2024, 4:45:27 PM