木蟹村

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 明日、世界が終わるらしい。
 ノストラダムスの大預言とかいうやつによれば、恐怖の大王がやってくるとかなんとか。テレビはどれも誰もああだこうだ言っている。お母さんは、口ではそれっぽいことを言って批判してる風だけど世界の終わりを信じてるし、お父さんは馬鹿にして笑っているけれど本当はわくわくして、びくびくしている。ぼくとだいたいおんなじ。
 それでも家の外は犯罪者がうろついているわけでも、お店からものがなくなるわけでもない。いつもの、ふつうの日。そんなふりをしている。
 そうなのかな?
 明日、ほんとうに明日、世界が終わるなら、ぼくはこんなところでぼーっとテレビなんか見てないで、やんなくちゃならないこととか、やりたいこととか、あるんじゃないかな。
 あいつに、オレ以外の男子と喋んなとか、ちがうそうじゃなくて、あいつには、オレがいるってことをちゃんと言っておくとか? そういう?
 幼稚園からずっと一緒で、最近クラスの男子にちょっと可愛いとか言われてて調子に乗ってるメグミのことなんか、オレは、まったくかわいいとか思わないけど、でも、他の男子といるのを見るのはムカつくんだ。
 明日。明日だ。明日、もしもほんとうに世界が終わるとして、そんでもしも、晴れたら。そしたらメグミに言いに行ってやる。

8/1/2023, 11:23:09 AM