「先生!イルミネーション見に行きませんか?」
「イ、イルミネーション……?それはクリスマスツリーとかそういう話?」
冬休みもあと一週間と差し迫った頃、彼女がそんなことを口にした。
イルミネーションなんて言葉、学生時代もそして今も耳にすることはあっても何処か無縁で他人事だった。
そんな俺が誘われているという認識でいいのだろうか。
気持ちは嬉しいが、相手は生徒。行けるわけが無い。
それに愛想のいい彼女には俺なんかよりもっと素敵な相手がいるはずだ。
「貴方の気持ちは嬉しいけれど、俺と一緒に居るところなんて見つかったら貴方が嫌な思いするかも。それにそういうのは大事な人と見るものじゃないの?」
俺はそんな人出来たことないから分からないけど、なんてカッコつかない言葉は心の中で。
できるだけ彼女を傷つけずに断ったつもりだが、彼女の顔は曇るばかり。
そんな顔させたかった訳じゃないのに。
ただ貴方が俺のせいで嫌な思いをするのは教師として見過ごせないだけであって…。
「…先生の鈍感。……でも裏を返せば卒業すれば一緒に見に行ってくれるってことですよねっ?」
「へ、へっ?」
予想外の提案に上擦った声が出る。
ぷくっと膨らんだ頬があざとい。
無自覚あざといで現行犯逮捕してやりたいぐらいには。
「私が生徒だから見られたら噂になるみたいなことを言いたいんですよね、」
「ま、まぁそうだけど……」
「私と一緒にどこかに行くのは嫌じゃないんですね!?」
「は、はい……」
「ふふ、そっかぁ…。先生…へへ、」
さっきの表情からは想像もつかないほど口角をあげて、「先生の隣に見合う女性になりますね、」なんて零してたけど俺に拒否権はないのね。いいけどさ。
…生徒と教師でなくなったら本当に断る理由も無いのだけどなぁと一瞬でも思ってしまった12月、寒いしずかな水曜であった。
2023.12.14『イルミネーション』
12/14/2023, 1:40:42 PM