野ばら

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「ないものねだっても仕方がないじゃない?」
宮沢はあっけらかんとそう言った。
「いやまあ?うちにお金がもっとあればなーとか、もう少し鼻が高ければとか、そういうことは思うけどね?ないものねだるより自ら勝ち取っていくのが私の流儀だもん」
ふたりきりの勉強会。雑談をしているうちに“結局人間ないものねだり”という話になって。でも宮沢はあまりそういうこと言わないよね、と言った言葉への返答があまりにも宮沢らしくて。確かに夜中まで自主練に励む小学生だったという宮沢の粘り強い性格だと、誰かを羨む暇なんてないんだろうなと思った。
自分のことをすぐに凡人だ凡人だというけれど、そのどんな困難にも真っ直ぐに立ち向かっていく心の強さは、やっぱり君だけの特別で、僕は本当にそれが羨ましいんだよ、と心のうちでだけ呟いた。
[3/26 ないものねだり]

3/26/2024, 1:52:36 PM