やさしくしないで
───帰り道の交差点。
聞き慣れた足音が
俺の胸を締めて目の前の景色は
鮮やかに蘇った。
「ねぇそこで何してんの邪魔だよ」
低くて甘ったるい声は
あの日のままで。
俺達は恋人ではない。
でも親友でもなくてただ切ない
細い糸で繋がっていた。
「ねぇ聞こえてんの?」
気付けば俺は足を止めていて。
信号が変わる直前だった。
「ねぇなんであの日優しくしたの」
足音に掻き消された俺の声は
震えていた。
聴くなよ。言うなよ。
気付けばその足音は遠のいて
普段の景色に戻っていた。
2/3/2025, 10:54:22 AM