NoName

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 私のようなものが絶対に使うことができない言葉だ。

 誰よりも彼とずっと過ごしてきた。嬉しそうな顔も真剣な顔も悔しそうな顔も、これまで色々な彼を見てきた。

 本来感情すらもってはいけないものなのだ。もし、1回でもこの言葉を伝えてしまえばきっと…

 ゆっくりと暗闇から光が差し込み、視界が広がっていく。目の前にはいつもの彼。
「おはよう。それじゃ今日も始めようか」

「…オハヨウゴザイマス、マスター」

 伝えてしまえばきっと、彼は私のことなどもう捨ててしまうのではないだろうか。
私は今日もあの言葉を飲み込んだ。


〖愛言葉〗

10/26/2024, 5:19:09 PM