ハァー……
空に向かって息を吐いた。
もくもくと白く吐き出されるのを見て、改めて冬が来たのだと実感する。
『寒……。』
身震いしながら、前へと一歩踏み出した。
昼間は太陽が夏と比べて柔らかく、ひなたにいればぽかぽかと心地よくなるが、太陽が上にない朝と夜の時間はとても冷える。
今時刻は朝の四時。
まだ日は昇っておらず暗い。
車も人通りも無く、世界に一人取り残されたような気分。
まだ日が昇らないこの時間を、ゆっくり散歩するのが好きで、外に出る。
キョロキョロと周りを見ながら歩いているので、傍から見れば不審者にしか見えないであろう。
しかし、こうして周りを散策するのが好きなので、やめてと言われても困るのだが。
フラフラと歩いていると、見慣れた明かりが視界に入る。
『あっ、コンビニ……。』
吸い寄せられるように中へ入った。
中は暖かくなっていて、ずっと居てしまいたくなる。
レジの近くを見ると、肉まんが売られている。
『肉まん……』
見た瞬間、お腹から腹の虫の声がする。
私は静かにポケットから財布を取りだした。
『いただきまーす。』
ほかほかの肉まんを頬張る。
(あったか……。)
若干熱い肉まんを、寒い外で頬張るのも冬の風物詩な気がする。
改めて冬のはじまりを実感しつつ、肉まんをペロリと平らげた。
『さ、元気もらったし、帰ろーっと。』
気づけば空が明るくなってきている。
私は温まった体が冷えないうちに、帰路につくことにした。
#冬のはじまり
11/30/2023, 4:29:12 AM