また4月23日。
何度も繰り返した4月23日。
僕はまたこの時間に戻ってきた。
永遠とも思えるこの時間に、最初は戸惑っていた僕も今では喜びを感じている。
これから彼女とデートに行けるのだから。
お洒落な音楽を聴きながら一番のお気に入りの服に着替えた僕は、彼女との待ち合わせ場所へ向かう為に家を後にした。
いつもと同じ場所で待っている彼女に、いつものように声を掛ける。
「ごめん、待たせちゃったかな」
「ううん、さっき来たところだから」
手に持っていたスマホをカバンに仕舞うと、何かに気付いたようで僕のことを目を丸くして見てきた。
「あれー? たかし、格好いい服着てるね、どうしたの?」
「そう? こないだ買ったんだよ」
彼女は何か閃いたように悪戯っぽい笑顔で笑った。
「それじゃあ行こうか」
「そだねー」
軽いノリで出発しようとすると、後ろから慌ただしい声が聞こえてくる。
「待て待て待て待て! トイレ行くって言ったじゃん」
「ごめんごめん、しょうたと見間違えちゃった」
「見ま……」
トイレから出てきたしょうたは、そこまで言われて気付いたのか、額に手を当ててため息をついた
「おい、たかし、その服……」
「あれあれー? たかしとしょうたペアルックじゃん、どうしたの、付き合ってんの?」
「お前まさか、たかしにも同じ服プレゼントしたんじゃねーだろうな!」
「んなわけ」
これ以上は喧嘩になりそうなので、僕からネタばらしをした。
「この前買ったんだよ、たまたまね」
「は〜マジかよ」
分かりやすく落ち込むしょうたに彼女は提案する。
「しょうた、この前うちに泊まったときに服置いていったでしょ、それに着替える?」
「ああ」
その提案に乗って彼女の家に寄る話になったが、勿論彼女の家に辿り着くことはない。
この時間も終わりが近付いてきている。
三人が並んで歩いていると、対向車線を走っていたトラックがセンターラインを超えて猛スピードでこちらに向かって走ってくる。
歩道に突っ込んでくるトラック。
目の前まで迫ってきた鉄の壁に、僕らは一様に死を意識させられる。
助かる訳がない。
その瞬間。
「しょうた!」
彼女が僕に向かって飛び込んでくる。
僕は手を広げてそれを受け止め、彼女は目を丸くして言った。
「あっ」
また僕は繰り返す。
叶わぬ恋が叶うのなら、死んだって構わない。
「たとえ間違いだったとしても」
4/22/2024, 3:47:16 PM