zene

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「ずっと一緒だよ」
そう言って笑ったアイツの顔が脳裏をよぎる。俺たちはそんな不確定な口約束だけで繋がれていた。
しかしそこにはたしかにお互い感じあってるものがあって。俺らはそれを「シアワセ」って呼んだ。


でも、所詮こんなものだ。人はすぐ簡単に死ぬ。不確定なものはすぐにもやとなり誰の心にも留まることはない。そうだろ。なあ、応えてくれよ。
俺はそっと横の女を揺する。しかしこの女もアイツのまがいものに過ぎない。違う、違うんだよ。何もかも。アイツの温もりも、俺の心の空白もこいつなんかで埋まるわけねえんだよ。


.....なあ、どこにいるんだよ。
お前、言ったよな?「ずっと一緒だ」って。嘘じゃねえかよ。何勝手に死んでんだよ。その言葉がどれだけ俺を救ったか分からねえくせに。俺らはずっと一緒だろ?
そうだろ、なあ。
......応えてくれよ.......
俺の声は気づけば震えていた。ぽとりぽとりと頬を水が伝う。なんだよ、なんの水だよ。俺は慌てて服の裾でこするが、止まらない。むしろどんどん溢れてくる。
そうだ。アイツはもう居ない。どれだけ俺が名前を呼んでも、振り返ることすらしてくれない。わかってるのだ。しかし心のどこかであいつを欲する度に胸の空白が大きくなって行く。

俺はきっとこれから先もあの言葉に囚われながら生きていくだろう。
だいぶ待つことになるかもしれねえけど、もし俺がそっちにいったら、約束通りずっと一緒にいようぜ。
約束、応えてやる。だから.....その時まで待っててくれないか?
zene

11/15/2025, 4:08:36 AM