松坂 夏野

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辺りはもう暗くなっていた。

現在の時刻は夜中の2時だから、一般的な感覚で言えば
それは当たり前のことである。
だが、夜の9時から布団に入り目を閉じていたミヤに言わせると、辺りは暗かった。

「変な時間に起きちゃった。」

家族はもう寝ているので声に出すわけでもなく
ミヤは心の中でそう呟く。
いや夜中なのだから、もう、というのはお門違いなのだろうか。
そんなハテナを1人で浮かべては自ら回答し、うやむやのまま思考を手放す。

経験上、眠れそうにないことは分かっていたため、
ミヤは今日あった出来事を意味もなく思い浮かべていた。
例えば、恋人に放たれた「別れよう」の一言だとか。

思い出すと、心臓のあたりが締め付けられた。
心が嫌な音をたてている。

目の辺りがじんわりと熱を帯び始めると、
どこからか音が聞こえた。

雫だ。

蛇口がきちんと締まってないんだ。

誰が雑に締めたのだと考えながら、台所へ向かい
蛇口を締める。
だが不思議なことに、水は滴り続けていた。

ピチャン、とまた音を立てながら一滴、落ちる。

排水溝に流れるほどにも満たない量の雫は
いつまでもシンクに留まったままだった。

【雫】

4/21/2024, 3:44:50 PM