閉ざされた日記
○月■日
白い薔薇の花を一輪持って 俺は、
今日もお前のお墓に向かう
そうして墓前にお前の髪の色と同じ
白い薔薇を供える。
お前が亡くなって一年が経つ
「やっと見つけたよ お前の日記!」
俺は、古びた表紙の日記帳を
お前の墓前に掲げる。
「勝手に引き出しをこじ開けたのは
悪いとは、思ってる
けどお前だって 俺に黙って隠す
必要ないだろう 厳重に鍵まで
掛けて」
(ったく俺が鍵をこじ開けなかったら
ずっと知らないままだったんだぞ
お前の気持ち知らないまま
一生を終えるなんてその方が
未練が残るだろう....)
心の中でお前に文句を言うのは、
許してくれ だってそうだろう...
【貴方にこんな醜い私 見られたくないから貴方に内緒で日記を書こうと思います
私は生まれつき 人より早く老化する病に
罹っています。
だから黒髪だった期間も短く 今はこんな
白髪だらけ 手も痩せ細り 皺だらけ
こんな私を見たら貴方は幻滅するでしょう
だって貴方の周りには、可愛くて
綺麗な子ばかりだから...
何時だって モテモテで周りの女の子達が
貴方を放って置かなかった。
貴方は、誰にでも優しくて だから
あの時 ふらついてしまった私を見かねて
声を掛けてくれたのは、特別じゃ無いって
分かってる .... でも私は、
あの時から 私は貴方が好き
でも 醜い私に想いを伝える権利なんて
ない だから 友達でも何でも貴方の隣に
居られる事が嬉しかった
貴方は、これからどんな人を好きになるの
かなあ... きっと私より綺麗な子を
好きになるに決まってる
だって貴方は、面食いだから
こんな醜い想い貴方に知られたくないから
だから日記に書いて閉じ込める事しか
できない...
こんな醜い私 貴方は嫌いに決まってるのに....】
「本当 馬鹿な女だなあお前は
病気の事だってちゃんと詳しく言って
くれれば俺だって何か出来る事が
あったかもしれないのに...」
「はあ~」と俺は、溜息を吐く
一人よがりで 思い込みが激しくて
誰にも言わず一人で全部背負い込みやがって....
「俺の返事も聞かず勝手に逝くなよなぁ...」
俺は、頭を押さえ ガジガジと髪の毛を
掻く
「好きでも無い女の墓参りに毎日来るかよ!」
おまけに....「想いの丈 全部日記に綴りやがって 俺に直接言えよ!」
俺は拳で地面を叩く
「引き出しの奥にしまって鍵掛けやがって
取り出すの大変だったんだぞ!」
(全く こんな可愛い事書いて置いて
俺に読ませ無いとか とんでも無い女だなあ... お前は...)
俺は、ニヤリと笑い
「おかげで ますますお前に惚れちまった
じゃねェか もう 俺 お前のせいで
一生 独身だわ 俺モテるのにどうして
くれるんだよ! 罰としてお前の日記帳は
俺が預かる ざまあ見ろ!!」
こうして俺は、あいつの日記帳を持って
踵を返し あいつの墓を後にした。
1/19/2024, 7:30:40 AM