愛を叫ぶ。
恋の恥ずかしさも通り過ぎれば想いを伝えたくて叫びたくて仕方なくなるが、それが愛に変わってしばらく経つと、また伝える行為が遠くなるのはなぜだろうか。
そんなことを考えながら、近侍が淹れてくれた茶を一口含む。相変わらず火傷しないようによく調整された温度である。
空色の髪がかかる横顔を眺める。視線に気づいて微笑むと、小首を傾げた。そんな行動も似合う男だ。
先ほど浮かんだ疑問を口にすると、瞬きを繰り返してから声を立てて笑う。
「厨番の皆さんは、常に愛を持って食事を作ってくださっていますよ」
食べやすい大きさ、食欲を掻き立てる味付け、栄養バランス……頭を悩ませながら毎食厨に立っている姿が浮かぶ。
「私も、茶を入れる時は常に相手を思っています」
近侍の視線の先にを辿って、自分の手元にあるカップに目を落とす。
苦過ぎない味と、熱過ぎない温度。舌の感覚を思い出して、ふと近侍を見た。真っ直ぐに見つめる蜂蜜色の目。
「こんなにも毎日愛を叫んでいたのに、気づいていただけていなかったとは……残念です」
寂しそうに言っているが、明らかにからかいが混じっている。この後絶対に何かあると身構える。
「言葉にするのは夜だけと決めていましたが、それ以外の時間でも重ねることにいたしましょう」
それ見たことか。やはり何かあった。
このままではいけないと慌てて目を逸らすが、顔に集まった熱はきっと見過ごしてもらえない。カップを持つ手に力がこもる。
さすがに勤務時間中は諦めると言いながら、近侍が立ち上がる気配がする。本丸運営に勤務時間も何もないと思うが、それは口に出してはいけないと本能が警鐘を鳴らしている。
いつの間にか目の前に迫っていた男が、耳元に口を寄せた。
「お覚悟を」
5/12/2026, 6:41:21 AM