めしごん

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沈む夕日



雪解けの精霊、キャストペリンと会えるのは一年に一度、雪が溶ける頃、日が昇る間から日の落ちる間まで。
草原の灯火、草の露から生まれる妖精達、太陽と月の逢瀬、隣の谷で山羊が三つ子を産んた話、幼なじみの恋の話、村の大人しいおかみさんがろくでなしの旦那をついにぶちのめした話、これから向かうという北の国の話、空の上でそれらをたくさん聞いて、たくさん話して、話の尽きる頃に二人は再び日の落ちる草原に舞い降りる。
足の裏が牧草を踏みしめる。体の重みを感じてシーカシーナは無性に泣きたい気分になった。

「また来年、ね。」
「うん、また来年。待ってるからね」
「わかったよ、僕のそばかすさん」

待っててね、額と額を合わせて囁く友人に、シーカシーナは涙を止め、ぐいと唇の両端を上げて強気に笑う。

「もちろんよ。嫁に行かないでずっと待ってるから、絶対に来てね。わたしの大事なお友達」
「おっかないなぁ……」

困ったように笑って、でも、僕の事は忘れて嫁に行っていいんだよ、とは言わない友人にシーカシーナはふふんと笑いながら強く鼻息を吐いた。

4/7/2024, 10:51:29 AM