古菱

Open App

お題:誰もがみんな

「人間って欲深いな」
「中二病みたいな台詞言いはじめたな」
「いやこれ見たらそう言いたくなるって」
 昼休みの教室でスマホの画面を保志に向ける。学校でスマホ使用は禁止されてるけど、教師がいなければみんな使ってる。俺たちの周りでもみんな机の下でこそこそスマホをいじってた。
 保志に向けたスマホには、某有名な検索エンジンに入力された文字とサジェストが表示されている。
「『誰もが』って入力して検索候補の一番上に『誰もが欲しがる』って出るんだぜ。みんな欲深いなって思うだろ」
 俺が言ったこと以外にも、サジェストの二番目には『誰もが欲しがる なんとかの的』とか、三番目以下にも似たようなことが並んでいる。画面を見た保志は「万人受けするプレゼント探すときに入れるキーワードなんじゃねえのか?」と言った。「あ、そっか」と俺は少し納得する。
 誰もが欲しがる。そのキーワードを頭の中で回転させているとふと疑問が浮かんだ。保志に尋ねてみる。
「誰もがみんな欲しがるものってなんだろうな」
「金」
「ありがち~」
「お前はなんだと思うんだよ」
「愛」
「嘘くせえ」
 保志が眉と眉の間に嫌そうに皺を寄せる。心底うざそうな顔が面白くて俺は笑った。
「じゃあ、誰もがじゃなくて保志が欲しいもんは?」
「来月出る予定のソフト」
「ゲーム好きらしい答えだな」
「お前は?」
「俺? そうだなあ」
 スマホを手に持ったまま頭を捻る。カードにゲームに金。欲しいものはいくつもあるけどどれか一つに絞るのはすぐにできない。
 んー、と唇を右に左に寄せながら考えてると、ドアから俺を呼ぶ声がして、足音が近づいてきた。
「学校でスマホいじんのは禁止だぞ。てことで放課後まで没収」
 俺の手にあったスマホは、いつの間にか隣にいた担任の手に収まっていた。うっかりしてた。「放課後、職員室に取りに来るように」と担任は俺のスマホを連れてそのまま無情に教室から去っていく。周りでスマホをいじってた奴らは机の中に手を突っ込んで固まってたが、担任が完全にいなくなった瞬間にまたこそこそとスマホをいじりはじめた。不運にもスマホを使ってることがバレたのは俺だけらしい。
「今はすぐにスマホ返してほしい……」
「そりゃこの状況なら誰もがみんな同じこと思うだろうな」
 机に突っ伏す俺を見て、ご愁傷さまと保志は笑った。

2/11/2026, 1:31:59 AM