—イブの奇跡は踊り出す—
今日はクリスマスイブだから、街がイルミネーションで煌びやかだ。歩いていて楽しい。
「ねぇ、大丈夫?」
だが、楽しいのは私だけかもしれない。隣にいる彼は、なぜか浮かない表情をしている。
「……何ともないよ」
彼はそう言うけれど、明らかにいつもと様子が違った。最近、仕事で忙しかったから疲れているんじゃないか、と思った。
彼のことを気にかけていた時、突然イルミネーションが金色に光り、愉快な音楽が流れた。
その音楽に合わせるように、数人のダンサーが道の真ん中で踊り出した。
「見て!」
私は彼に言った。彼の目も釘付けになった。プロのようなダンスに、私も夢中になった。
それは、周りにいるたくさんの人を、次々に巻き込んでいった。
何のイベントだろう、たまたま立ち会えて良かった、と私は思った。
うっとり見ていると、隣にいた彼もダンスに加わった。そしてダンサー全員が私の方を見て踊りはじめた。
(これってもしかして……)
私は察した。
彼があんな表情をしていたのは、きっと緊張のせいだったのだ。そしてこれは……。
音楽が止み、彼は誰かから花束を受け取る。他のダンサーはレッドカーペットをひいて、道の両端でしゃがんだ。彼が私に向かって歩いてくる。
「今日は伝えたい事があります」マイクを持って彼が言った。
私は溢れる涙を拭った。
「僕と結婚してください!」
彼は片膝をついて箱を開き、指輪を見せた。
「はい!」私は一度大きく頷いた。
私達が抱き合うと、街が歓声に包まれた。
涙のせいで街が余計にきらめいて見えた。
お題:きらめく街並み
12/5/2025, 3:20:16 PM