お題「糸」
「これはどうにもならないないねえ」
先輩はぐちゃぐちゃになった毛糸の束を解す手を止めて、そう言った。
その鮮やかな赤色の毛糸は、むしゃくしゃした人が糸を全部解いたあと、絶対にぐしゃぐしゃにしてやると言う強い意志で絡めました、とばかりの酷い有様だった。
「この糸、もう駄目ですかね?」
僕はその糸の上の方を持ち、引っ張った。糸は天井から垂らされていて、床に近い辺りでぐっちゃぐちゃの束になっていた。
「上は綺麗だけど、これじゃあね」
先輩はポケットから糸切りバサミを取り出すと、バチンと絡まっていないところで切った。とさっと、束が床に落ちる。
「この糸、もう駄目ですかね?」
「半々、ってところかな」
僕たちは赤い糸の管理人。
絡まってどうにもならなくなった糸は切る。少し整えてやれば綺麗になるものは整える。
そしてたまに、綺麗で真っ直ぐな糸も切らないといけないときがある。
(了)
6/18/2025, 3:22:54 PM