ささほ

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目が覚めると

ベッドから起き上がるとそこは見知らぬ部屋だった。殺風景なコンクリートの壁と床、窓もなく、ベッドの他にはシンプルなテーブルとタンスがあるだけだ。もちろん僕の部屋ではない。僕の妻も息子もいない。ここはどこだ。僕は混乱したままベッドを出た。テーブルの真ん中に赤いボタンがあり、「緊急時に押すこと!」と書いてあるから押してみた。すると天井から音が降ってきた。

「どのような問題が起きましたか?」
「ここはどこだ!」
「あなたの住まいです」
「僕の妻は? 息子はどこだ!」
「…エラーを発見しました、そのままお待ち下さい」

突然後頭部に衝撃を感じて僕は昏倒した。

目が覚めると、そこは僕の家で、妻が一歳になる息子を抱いて心配そうにこちらを覗き込んだ。夢だったんだな。よかった。あんなのは夢だ。

本当に夢? 妻の名前も息子の名前も思い出せないのはなぜだ?

***

ショートショート版をnoteに公開しました。
『目が覚めると』
https://note.com/pakiene_s/n/nc3aaef6ce20b

7/10/2024, 10:29:48 AM