村人ABCが世界を救うまで

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一度でも大切にされた経験があれば、それを抱えて生きていけるんだ。
もっともっとと欲しがる気持ちを押さえて。
口を押さえて、吐き気をやり過ごす。


私は壁を背に座り込んで呼吸を整えていた。
「そんなに、惨めでしたか」
気落ちした男の声だった。象牙色と今も言うのかは分からないが、彼は男性にしては肌色の薄い彫りのある顔立ちをしている。
彼とは不思議な距離感だった。
手を伸ばせば届くけど触らない。
「そう、だな。自分があまりに情けなくて。慣れてなくて、狼狽えてすまない…」
「はは!なんだ、僕が手を出したのがいけなかったのかと」
明るい声が聞こえた。
「貴方は自分のことを大切にしなさ過ぎだ。別にいいじゃないですか、一度や二度」
「何を言っている」
朦朧とする意識のなかで必死に耐えた。この男はとんでもない色男。
「男と女なんてそんなもんだと父がよく言ってました」
決して今まで触れてこなかった、筋張った手が伸びてくる。
「何があろうが貴方を守る。記憶さえも塗り替えてみせますよ。2度目いっときますか」
うそだろ…と、思う間もなく、壁との間に閉じ込められた。


君と出会って

5/6/2026, 10:14:56 AM